マネーサプライ
2009年01月09日 (金)
マネーサプライ、日本語に訳せば貨幣供給量、ですが、まず注意してほしいのはマネーサプライは中央銀行がこれまでに発行した紙幣・硬貨の総額ではないということです。マネーサプライは、イメージとしては「個人や企業が使えるお金の総額」ということですが、この額は預金と信用創造を通じて、中央銀行が発行した貨幣の額の何倍にも膨れ上がるのです。
このメカニズムを説明しましょう。
まず企業Aが銀行に1億円預金します。銀行はこのうち一定の割合、たとえば1%を日銀に強制的に預金させられます。この1%というのが預金準備率です。銀行は残った9900万円を企業Bに貸し出します。
さて企業Aから見れば、預金はいつでも引き出せるので、使えるお金は1億円です。一方企業Bから見れば、手元に9900万円あるのですから、使えるお金は9900万円です。しかし紙幣そのものは1億円分しかありませんね。これが、発行された貨幣の額とマネーサプライとの差を生みだしているのです。
先ほどの例をさらに進めましょう。企業Bはその9900万円を取引に使って企業Cに払います。その企業Cは受け取った9900万円を銀行に預金して・・・では最終的にマネーサプライは最大でどこまでいくでしょうか。預金を1回するたびに貸し出せる額は0.99倍されますので、
1億+0.99×1億+(0.99)2×1億+・・・
を計算すればいいことになります。一般に、最初の預金額をA、預金準備率をdとすると、等比級数の和の公式を用いて
A+(1-d)A+(1-d)2A+(1-d)3A+・・・=(1/d)A
となります。今回はd=0.01なので、マネーサプライは最大で預金額の100倍、つまり100億円にまで膨れ上がりうるということです。このようにして、預金によってマネーサプライが大きく増加するメカニズムを信用創造と言います。
(ただしこの公式で導かれたマネーサプライの値はあくまでも「最大で」、つまり増えうる上限にすぎません。実際には、預金せずに手元に残すお金があったりして、マネーサプライはこれよりは少ない量しか増えません)
マネーサプライは「現金通貨+預金」で測れますが、このうち「預金」の定義をどうするかでマネーサプライは変化してしまいます。つまり、預金の定義によって、マネーサプライは何種類かあるのです。
マネーサプライの分類法は2008年に日銀によって大きく変わりましたが、まずは2008年までの定義を見ておきましょう。
まずもっとも狭い定義では、「預金」を普通預金のみ、つまり欲しくなったら即座に引き出せる預金(これを要求払い預金といいます)のみで計算したものがM1です。
次に、普通預金に加えて、定期性預金、つまりある程度の期間は預けたままで引き出せない預金、を含めたものがM2です。これに譲渡性預金(CD)を加えた、M2+CDでマネーサプライを定義するのが一般的です。
なお、M2には郵便貯金や農協の預貯金が含まれていないので、これをM2に加えたものをM3と呼びます。
普通預金と定期預金は自分たちにもなじみのあるものですが、譲渡性預金というのはなじみのないものですね。それもそのはずで、これは企業を対象とした預金です。預入金の最低金額も一般的には5000万円と、個人ではまず使えません。譲渡性預金の特徴は、その名の通りで他の人に渡すことができることです。普通の預金は預けた人の名前が入っていますから、お金の代わりに他の人に渡すことはできません。しかし、譲渡性預金はそれができるのです。じゃあなんでこんな預金があるのかというと、企業が支払のために使うからです。支払の度に何億円も札束を抱えて歩きまわるのでは大変ですし危険です。だから銀行から引き出さなくても支払で相手に渡せる預金が必要なのです。
以上の話が2008年までの話です。
まず、2008年から日銀は「マネーサプライ」という呼び名をやめて、新たに「マネーストック」と呼ぶようになりました。
また、分類法も変化しました。
M1は、預金の種類は今までどおりの要求払い預金ですが、預ける先が銀行だけでなくゆうちょ銀行や農協であってもM1に含まれるようになりました。これは、郵便局が民営化されてゆうちょ銀行となり、他の銀行と区別する必要がなくなったからです。
M2は、譲渡性預金もM2に含まれるようになりました。つまり今までM2+CDと書いていたところが、ただM2でよくなったわけです。預け先については、今まで通りM2は銀行のみで、ゆうちょ銀行などは含まれていません。
M3は、預け先は銀行もゆうちょ銀行も農協も全てOK、そして預金の種類は譲渡性預金も含んでいます。M2と同じで、今までのM3+CDがただM3でよくなったわけです。
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参考
北坂真一『マクロ経済学・ベーシック』有斐閣
日本銀行のマネーストックについての解説ページ
みずほ銀行のマネーストックについての解説ページ
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